性癖は千差万別。至極当たり前だと思いつつ、自分が持ち合わせてない癖と鉢合うとたじろぐ。自分が感化されないだけであって、世の中には多様な癖が存在してるんだなと思い知らされる訳であります。
『ザクロスケ』氏の作る乙女ゲームはそりゃもう性癖に従順な作品でした。『欠損性愛(四肢の喪失に対する欲求)』が軸になっており、自分の好きなモノを真っすぐ見つめる純愛さすら感じます。
この記事では、ヤンデレ恋愛ADV『欠損失愛』の全体像に触れつつ、ザクロスケ氏の掲げる想いについても触れていこうと思います。注目ポイントも押さえてあるのでごゆるりとお楽しみください。
達磨ヒロインと猟奇犯罪者

『欠損失愛』は四肢を失って首輪に繋がれた主人公が四肢削ぎ魔から脱出を図るADV作品です。プレイヤーは猟奇犯罪者に手足を奪われており、隙を見てその場から脱走することはできません。
一見して詰んでいる状況ですが、四肢削ぎ魔は主人公に執着しており、ダルマ状態にして監禁するほど特別な感情を抱えています。どうやら脱出するチャンスはゼロではないようです。

ただし主人公は記憶を失っており、一体何故この場所にいるのかも覚えていません。猟奇犯の正体も、目的も、関係性も全く分からない状態。もし相手を怒らせてしまえば、容赦なく命を奪われてしまいます。
プレイヤーはマップを360度見渡して記憶の手がかりを探し、無残に殺される未来を回避しながら殺人鬼との対話に挑みます。四肢が欠損していても、目と口を使ってピンチを脱する訳です。

試遊版の段階では圧倒的な力の差を感じましたが、最終的に相手が可哀想になるくらいボロクソ罵倒できるとのこと。猟奇犯が尽くす献身的な愛の拒絶。凄まじいパワーバランスと癖を感じます。
実際にプレイしてみるとシナリオの骨格が太く、四肢欠損の設定も馴染んでいました。設定を無理やりねじ込んでいるのではなく、猟奇犯との駆け引きを生み出す舞台装置として機能している印象です。
四肢欠損は性癖です!

100人中100人が気になる部分。「なぜ四肢欠損なのか?」という質問をまっ先にぶつけました。開発者『ザクロスケ』氏は「性癖です!」と力強い回答。余りにも真っ直ぐな回答に清々しさを感じました。
今作は過去作に当たる「Romp of Dump」のスピンオフとして位置づけられ、前作の猟奇犯罪者が続投する形に。純度100%の性癖って圧があるなと思いつつ、作品として無事に着地させる実力の高さも伺えます。

ザクロスケ氏は「普通の乙女ゲーが刺さらなかった人に遊んで欲しい」と仰っており、形は違えど原点には愛が隠れているんだなと感じました。ドヤンデレの恋愛ゲーといっても差し支えない。たぶんきっと。
見た目のインパクトに気圧されそうになりますが、猟奇犯罪者と四肢欠損ヒロインを取り巻く恋愛アドベンチャーです。命掛けで脱出を図るホラー作品ではなく、純度の高い乙女ゲーなのかもしれません。

物語が動き出す最序盤しか触れていないので全体像は掴めていませんが、今作は開発者の性癖を前面に押し出しつつ、強烈なキャラクターがゲーム性とシナリオに上手く溶け込んでいる印象を受けました。
分岐によるゲームオーバー数も多く、テキスト差分も多そうな印象。シナリオが破綻しないよう調整しながらやりたいことを全部詰め込む意志の強さも感じます。二人の恋路がどこに着地するのか注目です。
SとMを満たす猟奇犯との攻防戦

今作を下調べしている際、公式サイトに『貴方のSとMを満たす』との記載を発見。どこからどう見ても無抵抗な主人公のMッ気しか満たせないだろと思ったので、意図についてしっかり尋ねてきました。
ザクロスケ氏いわく、「後半に進むと四肢削ぎ魔が痛い目にあう展開もあるかもしれません」とのこと。序盤を触った段階では想像もできませんが、四肢欠損した女性が一矢報いるシーンも拝めるらしいです。

四肢を失い為す術なく猟奇犯に蹂躙されるM心。圧倒的な優位性を持つ男性をボロカスに乏しめるS心。こう解釈すると確かに公式サイトの文言は嘘偽りではなかったんだなと確信しました。性癖に従順すぎる。
ゲームの設定上、命の危機が常に迫る緊迫した極限状態を想像するかもしれませんが、実情は意外とマイルドに設定されているように感じました。選択肢次第ではSもMも演じられるのかもしれません。

取材中にぽろっと聞こえた「私はひねくれ者なので…」という言葉が反芻しました。乙女ゲーのことは良く分かりませんが、ザクロスケ氏が遊びたい乙女ゲーが真っ直ぐに表現されているのかなと思います。
ピーキーな作品は特性上、万人受けしづらい宿命を背負っています。逆に言えば、極端しか愛せない人に欠かせない作品ともいえるでしょう。今作の持つ暴力的な癖は、きっと誰かを射貫く気がしました。
HARF-WAY コマーシャル
絵を一切使わずに文字だけで作られたテキストADV『文字遊戯』。様変わりした世界観が目玉と思いきや物語は思わぬ方向に進み、プレイヤーは言葉に干渉しながら世界を書き換えて真実と向き合うことになる。

キャラボイスと立体音響が物語に厚みを持たせる

今作は音作りにも注力しており、試遊時点でキャラボイスも搭載されていました。テキスト上のやり取りと比較して作品に厚みを感じたので、音声による没入感は想像以上に大きいものだなと再認識。
BGM等のサウンド面も立体音響を導入しており、360度探索できるパノラマ機能との相性も良さそうです。性癖や我を押し通すのではなく、世界観を通じてゲームを楽しんでもらう姿勢も感じられました。

今作は猟奇犯罪者と手足を失ったヒロインの2名で構成されており、一般的な乙女ゲーとは毛色の異なる作品です。とはいえ、根底に隠れる『愛し愛されたい欲求』へのアプローチは恋愛ゲームそのもの。
また前述したようにサウンド要素も注目ポイントであり、今後のゲームイベントで見かけた際はヘッドホン越しに体験して欲しいところ。時期は未定ですが、steamでの体験版配布も検討中とのことです。

完成が近づくにつれて罵倒されて涙ぐむ四肢削ぎ魔のスチル絵とかも公開されるのかな~とか思いつつ、密かに制作を見守りたい作品です。ドSもしくはドMになりたいドヤンデレ乙女ゲーを遊んでみたい方は是非チェックしてみてください。