ゲームの物理媒体が減少し、ダウンロード販売が市場の主流となる現代社会。気になっていたゲームのデジタル版は見かけても、手に取れるパッケージ版はそもそも流通していないケースも珍しくありません。
そんな中、フィーチャーフォンアプリの名作を次々と復刻し、とうとうパッケージ販売までこぎつけたゲーム会社が存在します。今回は特別にご機会を頂き、時代に逆行してパッケージ版のリリースに力を入れる『株式会社ジー・モード』様のこだわりと苦労について訊かせて頂きました。
インタビュアー:稲庭 淳
カメラマン:よさりそら
執筆編集:こうゆう
パッケージ化の始まりはファンの言葉
――まず初めに自己紹介をお願いします。

竹下氏:株式会社ジー・モードの竹下です。取締役として事業全体を統括させてもらっています。ジー・モードに入ったのは今から7年ほど前になりまして、同席している八田と一緒にSwitch向けのダウンロードゲーム事業を立ち上げました。

八田氏:ジー・モードで開発のディレクターをやっております八田です。おもに※G-MODEアーカイブスや『みんなで空気読み。』などを担当しています。パッケージ版では、限定版の製造管理や任天堂さんに製造オーダーを出すところも担当しております。
※フィーチャーフォンアプリを現代に復刻するプロジェクト
――竹下さんはパッケージでどの辺りを担当なされるのですか?
竹下氏:総合プロデュースですね。2026年1月に発売される『探偵・癸生川凌介事件譚』シリーズのパッケージ版では、まずこれをやろう!という言い出しっぺであり、パッケージ版に入れる内容や、ジャケットデザインの方針など決めさせてもらいました。
――そもそも、「G-MODEアーカイブス」で発売するゲームの候補は竹下さんが見つけてくるのでしょうか?
竹下氏:私たちから見つけて候補に挙げる場合もあれば、お客さんからのリクエストがきっかけになることも多いです。お客さんのリクエストで動くので、我々は「リクエストドリブン」と呼んでいます。
始まりは「何か復刻してほしいものがあれば教えてください」と弊社の公式Xでリクエストを募ったところ、癸生川のリクエストがすごい勢いで来たんですよね。そこで初めてこのタイトルのことを知って、権利を持っているところへ当たってみようか、と動いたんです。
――リクエストが来ると竹下さんが「これ復刻できないですか?」と話をしに行くんですね
竹下氏:そんな偉そうなものではないですよ(笑)「復刻させていただけないでしょうか?」とお願いをしに行かせてもらいます。
やはりフィーチャーフォンアプリですので15~20年ほど前の話ですし、アプリデータが残ってないことも多く、捜索だけでもお手間をかけてしまいます。それでも協力いただけるのは、ファンの方のリクエストや、また遊べるようにしたいといった趣旨に賛同して頂けて、といったところが大きいと思います。
――遊んでくださる皆さんのリクエストを受けて企画を立ち上げるところまでは竹下さんがやられて、そこからは八田さんが開発以降を請け負う形でしょうか?
竹下氏:はい。ここから八田に「やって~」とお願いするだけです。基本仕事を増やす係なので(笑)
八田氏:仕事がないと困りますからね(笑)
G-MODEアーカイブス足掛け5年で初のパッケージ化

――フィーチャーフォンアプリの復刻を始めてから5年が経過して、リリース総数はどのくらいになったのでしょうか?
八田氏:※G-MODEアーカイブス+やナンバリングタイトルを含めると約130本になります!
※ジー・モード以外の会社から配信していたフィーチャーフォンアプリを復刻するプロジェクト
――改めて凄い量ですね…そしていよいよパッケージ版を出すところまで来たと
竹下氏:長らくファンの皆様からのご要望があり、「よし!じゃあパッケージにチャレンジしてみよう!」という部分がスタートですね。

――モバイルやコンシューマー向けのダウンロードゲームを作っているというのがジー・モードの特色だったと思うのですが、何故そこから逆行してパッケージに行くぞ!となったのでしょうか?
竹下氏:デジタルダウンロードが主流になってきましたが、私自身もそうであるように、やはりゲームを手元に残る物理の形で欲しいというニーズはあると思っていましたし、弊社の新しいひとつの挑戦としてパッケージ版もやってみようというのもありました。
もちろん、ある程度の本数が見込めないとパッケージ版を作れないというのもありますが。
永久に遊べなくなる経験をしたフィーチャーフォンゲーム
――2015年にマーベラスが親会社になってから変わった、みたいな事もあるのでしょうか?
八田氏:マーベラスもコンシューマゲーム展開をしていて、我々もそちらのチームとは密に連携させていただております。コンシューマ事業を始める際には大変協力をしていただきました。
それもありながら、今回のパッケージ版については、まず「G-MODEアーカイブス」というベースのプロジェクトがあってこそだと思います。フィーチャーフォンアプリのプロジェクトなので、ジー・モードの生い立ちやストーリーとも合ってるんですよね。
今回、G-MODEアーカイブスとして初のパッケージ化が『探偵・癸生川凌介事件譚』シリーズですが、非常にファンのリクエストが多かったですし、フィーチャーフォンアプリということで遊べなくなるフェーズを皆さん一度は体験されてるわけです。
手元から消えてしまう経験をしているファンの方々からの熱意や「手元に残しておきたい」というご要望が今回のプロジェクトが実現したきっかけかなと思っています。

小島氏:モバイルゲームユーザーは、永久に遊べなくなることを経験していますよね。
アーケードは基板を購入して遊ばれている方もいますし、歴代のコンソールゲームもハードやソフトを入手すれば遊ぶことができます。
スマホゲームでは遊べなくなってしまうものがありますが、フィーチャーフォンアプリのファンはそれよりずっと前に「遊べなくなる」を体験されている方々です。
竹下氏:「フィーチャーフォンゲームをやっていた会社が何故、コンシューマに?」と思われる事もあるかもしれませんが、フィーチャーフォン自体が無くなっていく中で、事業転換をするのは必然でした。
スマートフォンではなく、何故Nintendo Switchを選んだのか?
――フィーチャーフォンのアプリが遊べない時期が10年近くあったと思うのですが、その間も復刻したい思いはあったのでしょうか?
八田氏:それは結構ありますね。やっぱりフィーチャーフォンの後、我々はスマートフォンを体験していますがスマホに行けなかったコンテンツってたくさんあると思うんですよね。
ですが、そもそもスペックも違いますし、スマートフォンにはスマートフォンに合ったビジネスモデルとかコンテンツの形っていうのがあって、どうしてもフィットしない部分もあります。
竹下氏:一時期フィーチャーフォンのゲームをそのままスマホで遊ばせるような試みはやってましたよね。例えば、タッチパネルをバーチャルパッドにして遊ばせるシステムを自分が入る前のジー・モードがやっていたと思います。
これは私の想像ですが、続かなかったのは採算的な面だけではなく、物理キーで操作していたものを、バーチャルパッドに置き換えたものは個人的には操作感が良くないと思っていて、ユーザー体験的にも満足いくものにならなかったからではないかなと…
G-MODEアーカイブスの展開先にスマートフォンではなくNintendo Switchを選んだのは、物理キーのコントローラーがあるというのも私の中で大きな理由でした。
リメイクしない逆転の発想から生まれた『G-MODEアーカイブス』

――復刻はずっとやりたかったけれども、開発環境やハード面の条件が揃わなかったんですね。それがSwitchでようやく実を結んで…
竹下氏:自分がジー・モードへ入った時に、「フライハイトクラウディアがまた遊びたい!リメイクしてください!」という問い合わせをよく見てたんですよ。
なんとかできないのかな、ならないのかなと思ったんですけど、フルリメイクやゼロベースからの移植だと、開発費をまかなえるだけ売れるのかどうかわかりませんでした。
なんとかしたい、やりたいけど、今のままでは難しいな…と思っていましたが、ある時「あえて当時のものをそのまま出したらどうだろう?」「そのままであることがコンセプトとすれば?」と。
それであれば当時のままあることはマイナスではなく、むしろ正しい状態になる。そんなコンセプトのプロジェクトにしたらどうだろう、と始めたのが「G-MODEアーカイブス」なんです。

竹下氏:最初はこのプロジェクト名を「アプリアーカイブス」にしようかとか、「ケータイアーカイブス」にしようかとか。アプリを使うにしてもスマホが出ちゃってるし…と色々案はありましたが、あえて「G-MODEアーカイブス」ってどうだろうと。
「G-MODE」は弊社の社名ですが、いち早く携帯ゲーム専門メーカーとして誕生し、育った背景もあります。このフィーチャーフォンゲーム復刻プロジェクトの旗振り役になる理由は充分あると。そういった想いからこのプロジェクト名に決めました。
社名のジー・モードが入っていることで、そのシリーズ名をつけて他社さんがライセンスしてくれるんだろうか?と心配した時期もありましたが、G-MODEアーカイブスがフィーチャーフォンゲームを当時のまま復刻しているブランドだと浸透してきたこともあり、買ってくださるお客様も「ガラケーの時のままじゃないか!」とお𠮟りを受けることもありませんでした。
ですので「G-MODEアーカイブス」とタイトルに付くことに反対されたこともありがたいことに今までありません。
パッケージ化に踏み切るきっかけは
――今回、「探偵・癸生川凌介事件譚 コレクション」がG-MODEアーカイブス作品では初のパッケージ化ということですが、普段他のタイトルも含めどういう理由でパッケージ化するタイトルを決めているのでしょうか?第一弾は「みんなで空気読み。」のNintendo Switchパッケージ版だったと思います。
竹下氏:最初のきっかけは、今ご一緒させていただいている流通担当会社様から「ジー・モードさん、パッケージ版出しませんか?」と声をかけて頂いた事です。それまではダウンロード専売でパッケージ化は考えたこともなかったのですが、まずは一度やってみようと。有難いことにパッケージ版「みんなで空気読み。123+」は定期的にリピートも頂いております。
やっぱりゲームはダウンロードではなくパッケージとして欲しいとの声も聞こえておりまして、とくに親御さんが子供にプレゼントするときは形に残るものが良いというのもあるらしく。ダウンロード版があるけどあえてパッケージ版で買われる方も多いようです。
――『みんなで空気読み。』などは小学生も遊ばれると思いますし、コロコロコミックともコラボされていて分かるのですが、他のタイトルはどうでしょうか?

竹下氏:最初は流通担当会社様から「OUのパッケージをやりませんか?」がスタートだったんですよ。でも開発が遅れダウンロード版の発売自体が当初より結構あとになる事が決まって、その際「弊社には『空気読み。』という実況などでも人気のタイトルもあるんですけど…」と相談したら「そっちを先にやりましょうか!」となりました。
八田氏:今では「OU」「新宿葬命」と続いて「オホーツクに消ゆ」、あとはラッキーゲームスさんと一緒に取り込んでる「ナンプレ」シリーズもコレクションとして出させてもらってます。
パッケージ版の製造数は、ダウンロード版の本数から予測
――売り上げや数字をどうやって読まれてパッケージ化の企画されているのでしょうか?
小島氏:ダウンロード版の販売数が一つの指標になりますね。それがおそらく最大値だろうと予測して、あとはSNSなどで頂いた声や流通パートナーさまの意見などを総合して考えていきます。
――SNSの声とは、「これパッケージ版を出して欲しいな~」といったものでしょうか。
小島氏:固定ファンが多く愛されている作品であることはとても重要ですね。しかしそればかりではなく「ナンプレ Relax & Classic -Seasons Collection-」のように、店頭でパッケージをふと見かけて購入される方が多いだろうと思われるタイトルも手掛けています。
八田氏:あまりに単価が安いダウンロード版だけの場合、ソフトを作るにも製造の原価というのがあるので、ある程度のお金をいただかないと、我々もビジネスとして成り立たないところが難しいですね。
例えば、「1本500円のゲームでいきなりパッケージ化します!」というと、やっぱりビジネスのあれに合わないので、そういったものは流石にちょっとできないですけどっていうところもありますね。
――商品化ができる最低ラインのようなものはあるのでしょうか?
竹下氏:定価として3000円以上のものに出来るかどうか、という点を弊社ではひとつの基準に考えています。
八田氏:例えば、「みんなで空気読み。」のパッケージ版は1~3が同封されていて、さらに携帯版の初代フィーチャーフォン版「空気読み。」が入って、計4本のコレクションタイトルになります。

竹下氏:最初は1本500円で販売していたものを4本セットとはいえ、3,000円(税別)という値付けにするのは勇気がいりましたけど、特にそれに批判的な声は聞かないですし、リピート製造依頼も継続して頂いているので、ちゃんとお客さんに受け入れてもらえたのかなと思っています。
――ファンの方は難しいことを考えず、「パッケージを出してくれ!」と言った方が良いのでしょうか?
竹下氏:もちろんそうです!
――先行してダウンロード版を発売した後にパッケージ版を発売して、「それいま出すの?」といった反応にはならないんですね。
竹下氏:むしろ「パッケージ待ってました!」とお声を頂くことも多いですね。音楽におけるアルバムのような感覚かもしれません。曲を聞き込んで気に入ったから、棚に置くために物理版も欲しいといったイメージですかね。シングル曲を何本か出した後、満を持して発売されるアルバムCDみたいな。
皆さん!欲しいゲームがあったら予約をして欲しいんです!
小島氏:この場をお借りしてお伝えしたいのですが、本当に欲しいゲームのパッケージ版はぜひ予約をして欲しいんです。なぜなら、私たちは製造本数(限定版も、通常版も)を「予約数」を基準として製造するからなんです。
ですので「発売してから買おう」という方がたくさんいた場合は、例えば初回製造のみの限定版などが買えなくなってしまう可能性が出てきたりします。欲しいパッケージ版のゲームはぜひ予約していただけるとメーカーは非常に助かります!
八田氏:ダウンロード版をウィッシュリストに入れて頂くのと同じくらい、やっぱり予約をしていただけるとすごく嬉しいですね。
――予約数とかってどれぐらいの頻度で確認できるものなんでしょうか?
八田氏:1週間単位でレポートを頂いています。
――限定版の付録特典に何を付けるかをどうやって考えているのでしょうか?
ジー・モードさん一同:うーん…これは…
竹下氏:例えば『OU』の愛蔵版ですと、一旦採算などは横に置いといて「ファンの人が喜んでくれるものってなんだろう」「とにかく作品のことが好きな人が手に取ったときに喜んでもらえるようにしよう」というところから考えました。

そこで出た意見は、「OU」が生まれるきっかけとなったミヒャエル・エンデの『モモ』の本のような質感や手触りを目指そう、というものでした。
記事を読まれている方には伝わらないことで恐縮ですが…この質感、この手触り、そして「ファサッ、と本がケースから抜ける感触」。ココを一番こだわりました。『モモ』の横に並べて本棚に置かれていることをイメージして考えていきました。
「OU」パッケージ版の進行はプロモーション担当の渡辺がメインでやったのですが、原作者の幸田御魚さんにもたくさん意見を伺って、様々なことを細かく確認しながら進めていきました。あとこれは私のワガママなんですけど、最もやりたいことがあって…
インタビュー後編に続く。